父は若いとき、高田純次に似ていると言われていた。
だから今日からここでは父を「純次」と呼ぶ。
母は…とても小柄なので、ミニサイズのミニーと呼ぼう。
そんなミニー、ほんの少しずつではあるが、身体が動くようになってきたらしい。
ほんの少しでも、良くなってきているなら私は嬉しい。
参考:前回の投稿「謎の痛み」
ところが純次はそう思ってなかったらしい。
翌日、私にこう切り出した。
「あんこ、あのね。ミニーのことやけどね。今度で注射が4本目。ね?ちゃんとわかっとうと」
???
そう、純次の語り口は独特なのだ。
気持ちを落ち着けて聞かないと、理解できない。
これを我が家では「純次さん劇場が始まった」という。
前置きが長く、話の途中でいきなり登場人物どうしの会話が始まり、事実と想像がごちゃまぜになり、時制が行ったり来たりするので、聞き取りには上級テクが必要だ。
どうやら純次は、ミニーの病状がかなりひどく、この先は寝たきりになり、我々が介護しなければならないと考えた様子。
そして、それに先だって私の兄を呼び寄せ、今後どうするか話し合おうというのだ。
私は、いつになくイキイキしてしゃべり続ける純次を途中で制した。
「ちょっと待った。純次さん、先走り過ぎ」
きょとんとする純次。
「まだそうなると決まったわけじゃないよ。今月末まで様子見やけん、先生の最終的な診断を待って、それから考えようよ。症状だって悪くなってないし」
私が話している途中で、ミニーが割り込んできた。
「なに?私の話?なんで本人の目の前で、本人をのけ者にしてそんな話をするわけ?」
純次がイライラして口を開こうとするので、また私が制する。
純次とミニーにまかせると、話が噛み合わなくなるのだ。
だから、私が純次の話を通訳した上で、一旦ミニーをなだめる。
そして、また純次に向けて話を続ける。
そしてミニーに向けて説明する。
2人とも、不満げながらも納得したようだ。
ふ~、やれやれ。
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