もしかして声デカ家系(老親と楽しくくらす5)

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その日私は、ミニーに付き添って隣町の大きな病院に行っていた。
ミニーはそこへ数年前から定期的に通っているのだが、今回は身体が思うように動かないのと頭の働きに自信がないのとで、私に付いてきてほしいというのだ。

そこは、30年ほど前に私が検査入院していたところ。
当時はまだ新しく、きれいで活気のある(病院にふさわしくない表現だけど)印象だった。

しかし、久しぶりに訪れたその病院は、薄暗くて人も少なく、しーんとしている。
広くてしーんとしているのはなんだか不気味だ。
コロナ対策であまり予約を入れないようにしているのだろうか。
暗い雰囲気に、気が滅入りそうになる。

ミニーは慣れた様子で「あっち」「次はこっち」と移動する。
そして待っている間、私に話しかけてくる。
静かな院内に、ミニーの声が響き渡る。

「しーっ。声が大きいよ」
と私が言うと、
「ハァ?」
と聞き返す、耳の遠いミニー。
「声が、大きいよっっっ!」
そう言う私の声も大きくなるじゃないか。

ミニーの声が大きいのは、耳が遠いから仕方ない。
でもそういえば、純次も声が大きいぞ。
大きいけど滑舌は良くないので、純次から何か言われても必ずミニーは
「ハァ?」
と聞き返す。
そこで純次はさっきよりゆっくりハッキリ発音すればいいのだが、プチッと切れて(すぐ切れる)バカみたいに大きな声で叫ぶ。
う、うるさい…。
おじいさんの怒鳴り声、近所の人からどう思われているのやら。

そうだ、あにさんも声が大きいんだった。
我が娘が赤ちゃんのとき、あにさん(娘からすると伯父さん)と会うとその声の大きさにびっくりして、よく泣いていたっけ。
母である私の声は小さめだし、父親ももの静かだったからね。

そうか。我が家は声が大きい家系なのかもしれない。
私だけが例外…。

そんなことを考えているうちに、ミニーの検査が終わった。

診察のときに
「年を取ってここまで検査に通うのが大変だから、薬だけ家の近くの薬局で受け取りたい」
と交渉すると、すんなりOKが出た。

ミニー、スキップしそうなほど大喜び。
でも、「やったー!!」って叫ばなくてよかった。
また注目を浴びてしまうからね。
危ない、危ない。


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